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ITプロジェクトにおける失敗の兆候という話題

昨日、「ITプロジェクトにおける失敗の兆候--この12のサインに注意!」という記事が出ていたので思うところを書いてみます。多分に、自分の経験を元にブレイクダウンした形だが、おそらくわたし同様に実感することの多い人もいるのではないかと思うので。

元ネタは「Early Warning Signs of IT Project Failure:The Dominant Dozen(失敗するITプロジェクトの兆候:主な12のサイン)」という学術論文なのだそうだが、記事上ではかなり表面的な言葉で表わされているのでそれが何を示しているのかが分かりにくい。そこを具体的なもの、すなわち身近な物事に置換えて分かりやすくしようという試みでもあります。
先ず、先の論文で出されている12のリスクをほぐしてみます。

  1. 人材面でのリスク
    1. マネジメント上層部からのサポートが不十分である
    2. プロジェクトマネージャーの力量が不足している
    3. 利害関係者による関与や参画が不十分である
    4. プロジェクトチームの熱意が不足している
    5. チームメンバーの知識やスキルが不足している
    6. 該当業務を対象とする専門家のスケジュールが過密である
  2. プロセス面でのリスク
    1. プロジェクトの投資対効果に対する検討が欠如している
    2. 要件や成功基準に関するドキュメントが存在していない
    3. 変更管理のためのプロセスが欠如している
    4. スケジュールの立案や管理が不十分である
    5. 利害関係者間のコミュニケーションが円滑に行われていない
    6. リソースがより優先順位の高いプロジェクトに割り当てられている

1-1「マネジメント上層部からのサポートが不十分である」
これ、実は自分ではどうにもならない部分。マネージャの属する組織の問題、というか、「上司がバカだと仕事がポシャル」を字の如く現わしていると思います。簡単に言うと成功に必要なのは「全権を与えられ、必要な時にはアドバイスを貰え、ヤバくなったら上司が責任をちゃんと取ってくれる」という環境です。さらには「普段は余計な口を挟まない(邪魔しない)」という環境でもあります。ということでこの辺はマネージャ個々の資質、努力というよりは組織の問題。

1-2「プロジェクトマネージャーの力量が不足している」
簡単に言うと「ボンクラじゃダメよ」ということ。あえてこの辺の資質について書くとすれば、「先を見通す力、人の意見を聞くことができる広い心、己の力では何も出来ないことを知っている経験、関わる人全員の気持ちを汲もうとする努力、プロジェクト全体を成功させたいという強い意志」でしょうか。たぶん、一つでも欠けるとアウトかな。「俺は何処の大学出てるから頭がいい、おれはエライ」なんて勘違いしちゃってる奴は大概アウト。その辺でバイトしてる中卒、高卒でお前より賢いやつはもっと沢山いる、という現実を知った方がいいです。

1-3「利害関係者による関与や参画が不十分である」
臭い物に蓋をする癖があるとこうなりますね。あと「見て見ぬ振り」というのもありますけど、これは時として必要になるので何とも言えませんが、論文で言ってるのは恐らく「マクロ経済的感覚」だと思います。利害関係ですから当然、帰結するところはお金の問題です。プロジェクトの中における経済の総和は有限ですから、それを何処へどのように配分するかはマネージャの胸の中です。そこに総意が得られないプロジェクトは…わかりますよね。あと関係者の人生が変わる、という点もあるので注意が必要です。

1-4「プロジェクトチームの熱意が不足している」
プロジェクトと言っても仕事ですからねー。そりゃ手は動かせどペンは進まず…ってのはよくあることで。でも人って意外なことで動くようになるんですよ。簡単な言葉で書いちゃいますと「希望…」って奴でして、人は希望が持てると代償に関わらず動いちゃうものです。プロジェクトの先に何が待っているのか、絵空事でも良いので示せる空想力は必要です。難しいのはメンバーの希望が区々なこと。そこは歩いて話を聞いて回って自分の足を使うしか解決方法はないです。

1-5「チームメンバーの知識やスキルが不足している」
そもそもこのチームを集めたマネージャの資質が不足していた結果なので改善するだけです。このまま継続しても損失を生産するだけなのでバッサリいっちゃいましょう。こんなもの金を掛ければ直ぐに解消します。それが出来ないのは先の「マネジメント上層部からのサポートが不十分である」ところに帰結です。

1-6「該当業務を対象とする専門家のスケジュールが過密である」
そもそも、暇な専門家なんて信用出来ないですけど…ってのは置いておき、過密なら過密を前提としたスケジューリングすれば良いだけ。あくまでもキーパーソンなのだからそこを重視しないのはそもそも間違ってるやり方。とすれば必然、それなりのスケジュールになるので解消。何事もやり方の問題です。土台が傾いていれば屋根が傾くのは必然です。

2-1「プロジェクトの投資対効果に対する検討が欠如している」
何時の間にか「プロジェクトを完了すること」が目的にすり替わっちゃってるプロジェクトありますよね。まぁマクロ視点ではそれも間違いではないんですけど、そもそも「何を実現するためのプロジェクト」であるのかを考えれば直ぐにわかることです。あくまでも「何かを実現」するのが目的であり、この目的を全体で共有出来ている限り、リスクにはなりにくいはずなんですが。この辺は先の「熱意」の部分と密接に絡んでくる問題ですのでやはり足を使ってどうにかするしかないです。

2-2「要件や成功基準に関するドキュメントが存在していない」
お役所関係の案件なら大概、この辺のドキュメントはしっかり揃っています。しかし民間だとどうでしょうね。わたしはお役所関係が多かったので「とにかく文書、文書に対して対価が支払われる」という「文化」の中に浸っていたため当たり前に見えるんですが。これはマネージャのやり方の問題でしょう。先を見れば文書が必要なことぐらい考えなくても分かります。

2-3「変更管理のためのプロセスが欠如している」
スケジューリングとか、マネージャの資質のあたりに関係してくる部分でしょうか。人間は「基本的に間違いを犯す」というセオリーが無視されてますね。気付いた人が入れて貰う様にするしか無いでしょう。それでも入らなかったら「変更する気が無い」と理解して突き進むしかないです。前に行きたければ、ですが。

2-4「スケジュールの立案や管理が不十分である」
こんなものマネージャの資質、センスの問題。(バッサリ)首のすげ替えでなんとかなりますよ?

2-5「利害関係者間のコミュニケーションが円滑に行われていない」
これもマネージャの資質の問題。(バッサリ)と書きたいところですが、色々事情があるのでしょう。これについてはひと言、取りあえず集めて飲みに行け!話はそれからだ。

2-6「リソースがより優先順位の高いプロジェクトに割り当てられている」
これ微妙。本当に優先順位が高ければこれは至極当然。これが問題になったのだとすれば、「優先順位の見誤り」の方がリスクでしょう。社内的なリソースの割り振りの話であれば、それなりのプロジェクトの進め方の工夫が必要だし、外からリソースを連れてきて確保するやり方もあります。過去にコンペで「3人/月」で取ってきた案件がスタートする前に「2人/月」別の案件(これもコンペでうっかり取れてしまった)で使えなくなり、結局1人で何とかしなければならなくなったことがあります。2人/月分、どこから調達したかというと、何とお客さんの担当部署の2人を上手く利用して解決です。人っていうのは熱意と相互の理解、協力によってどうにでもなるものです。言うなればこれが人を使うことの極意。


長々と書いてしまいましたがこれ、プロジェクトに限った話ではなく、仕事と言える全てに当てはまります。この辺の内容がピンと来なかった人は人の上に立たない方が世のため人の為かもしれません。というか、立たないでくれ。
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