喪失 - りんごのお味

この週末にあまりにも多くのことがありすぎた。残すか残すまいか、丸1日考えた末、やはり何らかの形にしておくことが良いとの結論に達した。事は金曜の夜から始まる。原因は単純、自分のちょっとしたポカミスだった。腹帯ズルズルを知っていながら出てしまった。バイクに例えれば、キャリパーのボルトが緩んだままコースに出てしまったのと同じことか。結果として、演武の肝で鞍が回り始めてしまい、急制止をかけた際に和鐙を目一杯踏み込むことでそのまま鞍ごと回ってしまった様だ。これ自体はそれまで残っている記憶と、翌日聞き取って回った目撃証言からも一致する。人生何度目になるかわからないAmbulanceにまたもお世話になってしまったり、毎度ながら、数時間に渡るあっちとこっちの記憶が交互に入れ替わる状態を経て、寝るころには元に戻ってしまった。この点に関しては、関係者を始め、周囲の方に多大なる迷惑をかけ、また世話になり申し訳なく思うと共に感謝している。

ただ問題はその後だった。横からいつの間にかシャシャリ出てきているものが、勝手に全てを決めて手配してしまっている。墜ちることはどのような上手においてもあることだし、怪我も覚悟の上、全てが個人の意志と自己責任の上に成り立っているハズだった。ここに新しく異質な意志が介入したことにより、これより何とかバランスを取りながら回ってきていた流れに矛盾が発生した。ことの判断を下したのが誰だか書くつもりはないが、決定的な間違いは大きく次の4つある。

一つ目は、本来の目的がいつの間にか異質なモノへとすり替えられてしまったことを許してしまっていること。本来、個人の強い意志とビジョン、共通した目的へのベクトルによって維持されてきたものが、本来の目的としていたものを実現した際に、結果としてついてくるはずの「評価を得ること自体」が目的にされてしまったこと。こうなってしまっては、これに至るプロセス、はたまた実行手法そのものが変わってしまう。これは大いに憂える事態だ。何故なら、オマケの方が目的になってしまった時点で、本来の目的を達する為の実行手段が評価をえることを目的とした手段と成らざるを得ず、本来目指すはずであったものが捨てられてしまうことを意味するからだ。結果、本来の目的も得られず、オマケのハズであった評価も得られないというマイナススパイラルに突入してしまうこととなる。

二つ目は、先に述べたように危険が伴うものに対し、表面上は安全で楽しいものとして見せてきた謂われがある。そしてこれからもそのように見せなければならなかったはず。前日にAmbulanceが出たとしても、当日はキチンとピッチに立つ必要があった。結果のように、1騎損失となった場合、前日のAmbulanceを見て知っている人たちは「重傷だった」と認識するに違いない。1騎削った為に、これまでの努力を泡と化す「危険」のイメージが出来上がる。事実はその通りなのだが、そう見せてはいけなかった。

三つ目は、メンバーへ与える影響。これも必ずピッチに立つ必要があったと考える。内容はさておき、そこに立つことが、前日の状況や恐怖、恐れを払拭させる要素である。これから去ってしまうことが、地に転がることの恐怖と恐れを周囲に残してしまう。嘘でも良いからピンピンしていなければならなかった。また、誰もが心配して下さった様に、復活していて初めて彼ら彼女らは怖さを忘れ邁進することができる。欠けた状態で進むことは、次は己に降りかかるかもしれない恐怖が残ったままなのだ。四つ目は、次年以降の準備段取りについての見込みを全て台無しにしてしまった決断だったこと。諸々の理由により、今回欠けた1騎は絶対に出なければならなかった。来年は何のノウハウも残らない状態でゼロから始めることになる。当然、わたしは手伝うことは不可能だ。

このような横やりシャシャリ出の何も考えていないジャッジがまかり通る以上、このような体制にたいしては何の支援もすることは出来ない。それまでにそそぎ込んだ情熱、時間、労力は一瞬にして消し去られてしまう。そのような所へパワーをそそぎ込むことは恐らく無理であろう。あくまでも、自主体としてある場合にのみ、手伝うこともできる。だが、目的を違えたシャシャリ出のある中では、もうこれ以上のパッションを維持することは不可能だ。最後の最後で糸を切られてしまった。一度消えた情熱を再び燃やすことは、それを継続することの何倍ものエネルギーを必要とする。再びそれを燃やすには、残念ながら残された時間が少なすぎた。今年が最初で最後だったんだよ。

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